旅人と3人のレンガ職人の話をアレンジしました
「旅人と3人の美容師の話」
世界中をまわっている旅人が、ある町外れの一本道を歩いていると、一人の男が道の脇で難しい顔をして髪を切っていた。旅人はその男のそばに立ち止まって、
「ここでいったい何をしているのですか?」
と尋ねた。
「何って、見ればわかるだろう。カットに決まっているだろ。朝から晩まで、俺はここでカットしなきゃいけないのさ。あんた達にはわからないだろうけど、暑い日も寒い日も、風の強い日も、日がな一日カットとシャンプーさ。腰は痛くなるし、手はこのとおり」
男は自らのひび割れた汚れた両手を差し出して見せた。
「なんで、こんなことばかりしなければならないのか、まったくついてないね。もっと気楽にやっている奴らがいっぱいいるというのに・・・」
旅人は、その男に慰めの言葉を残して、歩き続けた。
もう少し歩くと、一生懸命髪を切っている別の男に出会った。先ほどの男のように、辛そうには見えなかった。旅人は尋ねた。
「ここでいったい何をしているのですか?」
「俺はね、ここで素敵なヘアデザインを作っているんだよ。これが俺の仕事でね。」
「大変ですね」
旅人はいたわりの言葉をかけた。
「なんてことはないよ。この仕事のおかげで俺は家族を養っていけるんだ。ここでは、家族を養っていく仕事を見つけるのが大変なんだ。俺なんて、ここでこうやって仕事があるから家族全員が食べいくことに困らない。大変だなんていっていたら、バチがあたるよ」
旅人は、男に励ましの言葉を残して、歩き続けた。
また、もう少し歩くと、別の男が活き活きと楽しそうに髪を切っているのに出くわした。
「ここでいったい何をしているのですか?」
旅人は興味深く尋ねた。
「ああ、俺達のことかい?俺たちは、人を幸せにしているんだ!」
「大変ですね」
旅人はいたわりの言葉をかけた。
「とんでもない。ここで多くの人が幸せになって、最高の人生を送るんだ。素晴らしいだろう!」
旅人は、その男にお礼の言葉を残して、また元気いっぱいに歩き続けた。